「山水人」オーガナイザー 福村祖牛さん インタビュー
人は昔 山から野に下りてきた・・・そして今 山に帰り始めた・・・
~お祭りとは自然と共生することを学ぶこと~
「山水人とは」
山水人(やまうと)は滋賀県高島市朽木の山の中にある生杉地区で「自然との共生・持続可能な生活をテーマにしたコミュニティー・エコヴィレッジ」であり、2005年以来毎年9月に開催される「村興しと野外フェスが融合したお祭り」でもある。
毎年形を変えながら今年9回目となる山水人2013が8月30日から9月16日まで18日間開催された。開催スタッフはボランティアで構成され、村とお祭りを作り上げる。
(photo by Yusuke Noguchi)(photo by Yusuke Noguchi)
今年は台風18号に見舞われ16日のお祭りは中止となり、人的被害はなかったものの大規模な損害を被った。
山水人村では有機農法でお米を栽培しており、今年は収穫を祝し満月の収穫祭が10月18,19,20日に開催される。
有機農法により栽培された稲は強く、幸い台風の被害は最小限に留まった。
10月上旬に稲刈りを予定で、現在稲刈りと収穫祭のボランティア・参加者を募集中である。詳しくは山水人HPでどうぞ。
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山水人オーガナイザーの福村祖牛さんが語る「山水人」
~山水人エコヴィレッジの経緯~
20歳から10年間京都の比叡山延暦寺と大徳寺の禅寺でお坊さんの修行していたんですけど、大徳寺の禅寺では今の物質社会の中でもお坊さん達は必要最低限の生活で、野菜は自給し、それぞれの仕事が分担され、経済的にもちゃんと回っている完成された共同体の生活がされていました。
お坊さんになる前から”自給しながら自分達の価値観で生きていくコミュニティー”をつくる夢があって、私も禅寺のようなコミュニティーを山の中でつくろうと思い、友人を頼りに31年前にこの地に越して来ました。
移住当初は地域の山仕事等の仕事を手伝いつつ暮らしていたんですが、京都で造園の仕事をするようになってからは京都にいる比重が大きくなっていました。
その傍ら山水人ではワークショップやキャンプを企画したり、京都でわくせい学校というフリースクールをパートナーと設立して、子ども達への合宿やキャンプの場所も提供してきました。
山水人のお祭りをするようになってからは山で過す時間も増え、開催を重ねるごとに少しずつ村住民も増え、念願のコミュニティー生活も徐々に現実味が出てきました。
~山水人のお祭り開催の経緯~
10年前に友人が野外のパーティーに誘ってくれて行ってみたんですけど、それは昔行われていたヒッピーのお祭りを彷彿させるようなもので、カウンターカルチャーの影響を受けた、音楽と自然が好きな沢山の若者達がいました。
彼からは私たちが若い頃より礼儀正しく、世代は違えど私や仲間達ととても近い価値観を持っていて、そんな若者達となら山水人で新たなコミュニティーが作れるかもしれないと強く可能性を感じましたね。
そこで京都の旅人達が経営するカフェ「Village」のオーナーの達っちゃん等に朽木でのパーティーは出来ないかと相談して、達っちゃんや仲間達とともにレイブパーティーとお祭りの融合という形で第1回の山水人を開催することに至りました。
~村づくりやお祭りを通じて伝えたいこと~
自然の中でお祭りを楽しみつつ、色んなことを学び、実践していく場を提供しています。
お祭り開催期間には若い人達が短期間の擬似的な形でコミュニティーでの共同生活を体験して、生き方を見直したり、自信を付けたり、様々な気付きと体験から自立へのきっかけや、自分の内面と外面を見つめ直しす機会になれたら嬉しいですね。
山での共同生活では薪を集めその薪を割りし、火を起して料理をしたりし、生きるために必要な最低限の知恵を学んだり、会場設営やイベント運営を経験したり、長期で滞在する場合は稲刈りなどの畑仕事も体験出来ます。
その中で思いやりや助け合い、シェアする心を育んだり、何よりもボランティア同士一生繋がりのある絆の深い仲間を手に入れていますね。
毎年沢山のボランティアが来ていますが、山水人開催当初のボランティア達は経験を活かし、田舎暮らしを始めた人も沢山います。
~お祭り開催中の電気のない日とは~
開催2年目より電気のない日を設けてきました。
私たちはずっと反原発を主張してきていますが、実際私たちの生活では原発で作られた電気を使用しています。
電気のない日は実際に参加者に電気のない生活を体験してもらって、電気とはどういったものなのか皆で考え直し、電気がなくても人間は生きていけることを再確認し、電気がなくても快適に、もしくわより楽しく過せるようアコースティックライブや餅つき、火起こし体験を企画しています。
(巨大火起こし)
311以降はもっと原発のことをみんなに知ってもらうために、ドキュメンタリー映画監督の鎌仲ひとみさんや反原発の活動をしている方々を招き講演会をしていただいたり、反核、反原発関連の映画上映をしています。
私がこの地に移住してきた頃は電気も水道もなかったのですが、今は電気、水道、インターネットまで使えるようになっています・・・。
山水人村では実験を兼ねて小型のソーラーパネルと風力発電を導入しています。現在は川の水を使った水力発電を計画中で、水車はもう作ってあるので、付近住民との川の利用の話し合いに目途が付き次第導入していきたいです。
~お祭り開催中のお金のない日とは~
現代の物質大量消費社会からの自立のために、お祭り期間中に実際にお金使わない日を設けています。
昼食を持ち寄りパーティーにして皆でシェアしたり、物々交換をしたりして、皆で助け合い、お金を介さないコミュニケーションを体験します。
山から街に下りると毎回カルチャーショックを受けます、街は明る過ぎる・・・。広告やお店、欲望を刺激するものが沢山あって、どうしてもお金を使わされるてしまう・・・。
山での生活は食事は質素だけど、十分楽しくて充実した暮らしが出来るんですけどね。
~学びの場&小商い実践~
山水人では学びの場っていうことを意識しています。旅をするのは色んなことを学べるし、視野も広がるからいいけど、人はいつか定住したり、子どもをつくりたかったりするだろうから、その時にはどうしても生活の糧が必要になります。
田舎暮らしをするにしても最低限の現金収入が必要になるので、アーティストや旅人にワークショップをする機会を与え、お店の出店は無料で出来るようにし、そうして彼らが経済的にも自立していけるよう山水人で小商いを実践して、経験を積んで自身を付けてもらえたら嬉しいですね。
就職しないで田舎で暮らしつつ、祭りやイベントに出店して生計を立てている人が沢山いるんですよ。
~山水人の今後展望~
お祭りとしては音楽だけではなくもっと舞踏などのアートを取り入れたり、クラフトやパーマカルチャーなどのワークショップにも力を入れていきたいです。
「ミチルト」(photo by Yusuke Noguchi)
現在山水人ではお祭りが中心になっていますが、土台となるしっかりとした村づくりや農業を頑張って、その上で村興しイベントとしてお祭りを開催するのが理想ですね。
農業と建築を教えている「どっぽ村」とコラボして、来年から山水人村で建築を教える学校を作る計画もあるんですよ。
記念すべく10周年を迎える来年は長期で1ヶ月間程開催しようかと思っていて、山水人の前にレインボーギャザリング開催の話もあります。
台風18号でティピや機材を流されるなど大きな被害を受けましたので、お祭りを存続できるかが問題です。
稲刈りや満月の収穫祭の参加者を募集していますので、ぜひご参加ください。
もしよろしければ山水人が継続できるように、お気持ちをカンパしていただけるとありがたいです。
(photo by Yusuke Noguchi)
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山水人はレイブのようで、ロックフェスのような、お祭り・・・音楽のジャンルも様々。
会場の人々は自由が好きで、音楽が好きで、芸術が好きで、自然が好きで、平和が好きで・・・
そんな彼らをこう形容したい「love & peace」
人々はお互いの自由や個性を尊重し、干渉せず
現代の社会から離れ 自然の中で太陽の動きと共に生きる
どこか違う国にいるような不思議な感覚
ミュージシャンは平和を歌い、人々は雨の中 歌い 笑い 踊った
(photo by Yusuke Noguchi)
と詩的になるような山水人。
山水人にはボランティアスタッフとして参加したが、ボランティアにはとても参加し易く、朝のミーティングで手伝いたい意思を伝えると一日からでも参加出来る。
運営の仕事を手伝った仲間達との素敵な出会いが沢山あり、彼らとはこれからも繋がっていくであろう。
オーガナイザーである祖牛さんはお坊さんということもあり、大変大らかな方で皆から親しまれている。そんな彼がオーガナイザーだからこそ、お祭りは自由度が高く、ゆるりとした雰囲気があり、個性の強い参加者達も自身を自由に表現でき、楽しめるのであろう。
311以降、今の社会への疑問を持った人は大勢いるだろう。
これから山水人のようなコミュニティーが少しずつ増え、自然と共生することを望む人々は増えていくのではないだろうか。
そうして社会は次の時代へシフトしていく。参加者にとってここでの様々な体験が社会からの自立へのきっかけになるに違いない。
大勢の人々が社会から自立したとき、社会は変わるであろう。
そういう意味では山水人に参加するあなたは、新たな時代の開拓者であろう。
あなたも山水人へ参加して、楽しみつつも人生の大切な何かを見つけてみるのはいかがでしょうか?
特にこれから田舎暮らしを始めたいと思ってるけど、「田舎には何もつてがないし、何から始めればいいのか分からない。」そんな方、山水人には旅人や田舎暮らし実践者が多く訪れるので、そんな人達と出会い繋がり、田舎暮らしを始めるいいきっかけが出来るかもしれませんよ。
詳しくはこちらで山人水HP→http://yamauto.jp
庭師・僧侶・山水人オーガナイザー 福村祖牛(ふくむら そぎゅう)
1951年生まれ。京都市出身。
中学時代よりバンドで音楽を始める。高校時代70年安保・ベトナムの反戦活動に参加し現代社会のあり方に疑問を持ち、旅を経て京都在住のインド等を旅した外国人ヒッピー達、インド帰り僧侶の影響を受ける。それまで政府や社会を批判していたが、20歳のとき自身の内面を見直そうと思い、京都比叡山延暦寺と大徳寺の禅寺で10年間修行。
大徳寺修行中に体験した僧侶達による完成された共同体を山の中の生活で再現したく、滋賀県高島市朽木に31歳で移住し、自身の共同体(コミュニティー)山水人エコビレッジを創設。山水人村ではパーマカルチャー実践やワークショップを主催、山水人開催前後はお祭りのオーガナイザーとし、村づくりやお祭りに注力している。京都市内で創造的な庭を作るアーティスト集団「わくせいサンガ」の庭師としても活躍中。
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